【グラフで見る】ヒバリの春の渡り時期 - 2期に分かれる

 2013年の2月上旬から7月上旬にかけて、京都・洛西(らくさい)の田んぼでヒバリ Alauda arvensis を観察しました。 その羽数の推移をグラフに示します。

見聞数の推移 - ヒバリ
見聞数の推移 - ヒバリ

 3月上旬に渡る

 2月上旬から3月上旬は50羽前後での推移です。 ヒバリはこの時期、数羽から数十羽の一団で過ごしています。 観察された羽数には上下に10羽ほどの差がありますが、ここへの出入りや、観察時に出会えなかった一団があるなど、その時々の差と考えられます。
 それが3月中旬からは15羽前後にまで減ります。 それまでの羽数の30%ほどですので、明らかにここから移動したことがうかがえます。 この頃、水を引くなど、田んぼに大きな変化はありません。 一方、ヒバリのさえずりがさかんになります。 ヒバリの一年の行動として、繁殖期を迎え、越冬していた個体が繁殖地や夏季を過ごす場所へ移動したのでしょう。 越冬組の一部がここで繁殖しているのか、あるいは越冬組はここから去り、別の場所で越冬した個体が飛来しているのかはよく分かりませんが、越冬数の30%ほどがここで繁殖していることになります。

 田植えを前にして水を引くと

 3月中旬から5月中旬までは15羽前後での推移ですが、5月下旬には10羽を切ります。 この頃、田植えを前にして田んぼに水が引かれます。 それによりヒバリの生息に適した、丈の低い草と露出した土とが入りまじった環境が一面、水没してしまい、移動を余儀なくされます。 残っている個体は、わずかに残された、草丈の低いあぜなどにいます。

 イネの成長にともない

 6月下旬にはついに観察されなくなってしまいます。 この頃は、イネの成長にともない、イネの株と株の間が葉によって覆われる時期にあたります。 葉はあぜにも覆いかぶさりますので、草丈の低いあぜなどで、細々と残っていた個体もついには移動せざるを得ないのでしょう。

 行き先は

 3月上旬の動きはヒバリの一年の行動としての移動ですので、繁殖する個体では繁殖場所へ、また繁殖しない若い個体では夏季に過ごす場所への移動と考えられます。 国内の別の場所のほか、国外からも渡って来ているようですので、そちらの方へ移動するのでしょう。
 5月中旬の動きは、ここで繁殖した個体や、その春に生まれた幼鳥の動きです。 観察を行なった場所の多くは水田として利用されていますが、ここから少し離れた場所では畑などもあります。 そこでは観察されることもありますので、そういった場所へ移動していることがまず考えられます。 生息に適した場所の多くが水田となり、生息適地が減りますので、畑など、残された生息適地ではたくさんいそうですが、羽数はわずかです。 これを全国で考えますと、田植えをきっかけに移動する個体は相当数にのぼると思われます。
 それではどこへ移動しているのでしょうか。 3月に移動した個体の生息地には、水田としては利用されていない場所もあるでしょうから、そうした場所へ移動していることが考えられます。 あるいは、ようやく雪が解ける中部地方以北の積雪の多い高地の草地や、麦を収穫したあとの畑など、この頃、創出される、ヒバリにとって好適な場所もありますので、そちらへ移動していることも考えられます。

ヒバリが耕起田で採餌する
ヒバリが耕起田で採餌する


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※ 補遺
・観察はいわゆるラインセンサス法(ルートセンサス法とも)により行ないました。
・洛西の田んぼに一定のコースを設定しました。
・2月上旬から7月上旬までの各旬の間に2日前後、観察しました。
・各旬で観察羽数の最大の日をその旬の羽数としています。


2016.04.08