水田におけるシギ・チドリ類の餌(えさ)

 京都・洛西(らくさい)の水田には8月中旬〜9月下旬にかけてシギ・チドリ類が飛来します。 そのシギ・チドリ類のえさについて調べてみました。

 シギ・チドリ類は湛水休耕田や干上がりかけの湛水休耕田などで水底をつついてえさを食べています。 そのほとんどは嘴(くちばし)の幅より小さなえさで、何を食べているか見えないことがほとんどです。 観察して見えるえさというのはそれほど多くありません。 しかし、このような大きなえさは、ほとんどの小さなえさに比べてその数倍〜数十倍の食べがいのあるえさであり、重要なえさと言えます。

 スクミリンゴガイ

スクミリンゴガイ

スクミリンゴガイの卵
(タカブシギの後にある桃色の塊)

スクミリンゴガイ?の稚貝を
ひなに与えているタマシギのおす

スクミリンゴガイ?をくわえているケリ

 スクミリンゴガイは通称「ジャンボタニシ」として知られています。南アメリカ原産で1980年代、食用に日本へ持ち込まれました。 洛西の田んぼでも帰化しています。

 この貝は田んぼに水が入る頃から水面より高い位置に卵を産みつけます。 田んぼに水がある限り、稲刈りの頃まで産卵しつづけます。 このため秋まで稚貝が発生しつづけます。この稚貝をタマシギが食べているようです。 ひなにもあたえているようです。

 ケリは冬季に土の中からこの貝を掘り返して食べているようです。

 ヤゴ(トンボの幼虫)

ヤゴをくわえるトウネン

ヤゴをのみ込もうとするセイタカシギ

 トンボの幼虫、ヤゴはシギ・チドリ類が好んで食べるえさのひとつです。 多くは周辺を飛んでいるシオカラトンボやウスバキトンボなど、トンボ科のヤゴと思われます。 この秋、2週間あまり滞在したセイタカシギはもっぱらこればかりを食べていました。 水深のある湛水休耕田で嘴を水中につけて左右に振りながら前進してヤゴを探りあてていました。

 ユスリカの幼虫

ユスリカの幼虫をくわえるトウネン

 ハエの仲間のユスリカの幼虫はトウネンなど小型のシギ・チドリ類が好んで食べていると思われるえさです。 嘴の幅より小さなえさで、何を食べているか見えないえさのほとんどはこれではないかと思われますが詳しくは分かりません。

 ミミズ

ミミズをくわえるジシギ類

 ミミズはオオジシギ、チュウジシギなどのジシギ類の主要なえさです。 草丈の低いあぜに好んで入るジシギ類は地面にくちばしを何度も差し込んで、ミミズを探りあてて土から引き出して食べています。 田んぼの水が少ないときには、田んぼに入ってあぜを横からつついている様子がよく観察されます。

 昆虫類

葉についた昆虫?をつつくエリマキシギ

 エリマキシギは主に湛水休耕田の水中をつついてえさを食べます。 しかし、ほかのシギ・チドリ類と異なり、湛水休耕田に生えた草の葉をつついていることがよくあります。 これも観察しても見えないほどの大きさなのですが、おそらく葉についた昆虫を食べていると考えられます。 2005年9月に飛来した幼鳥はもっぱら葉をつついていました。 湛水休耕田の水から上がって、あぜに出たほうが草は多いのですが、あぜに上がってえさを食べることはなかったです。

< 関連ページ >
鴫・千鳥 "採餌行動・えさ" ※ その他のシギ・チドリの採餌行動はこちらへ

洛西の水田におけるシギ・チドリ類の春の渡り
2008年秋、洛西の水田におけるシギ・チドリ類の渡り
洛西の水田におけるジシギ類の渡り時期
洛西の水田におけるシギ・チドリ類の秋の渡り時期

2012.11.16 / 06.10.01 N