1月中旬、京都市の鴨川(かもがわ)でアオサギ Ardea cinerea を観察しました。
毎冬、鴨川には、1000羽を越えるユリカモメが飛来しているそうです。 このユリカモメにえさを与えようと、岸辺からパンなどをまく人がいます。 そこへたくさんのユリカモメが群がってパンを食べています。
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ユリカモメとアオサギなどが食パンに群がる |
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この日、岸辺から食パンをちぎっては川へ向かって投げ込む人がおられました。
投げはじめますと、少し離れたところから、数十羽のユリカモメが飛来して食パンを食べていました。
近くにいたアオサギも、これに遅れじと、ユリカモメに加わっていました。
パンの切れはしのほとんどはユリカモメに食べられていましたが、アオサギは、えさを投げ入れる人の方を向いて立ち、食パンが足下に落ちると、すかさず、くわえてのみ込んでいました。
アオサギといえば、魚やカエル、虫、ネズミなどの小動物を食べる、いわゆる動物食として知られています。
動きのあるものを捕らえて食べています。
そのアオサギが植物性の小麦を主な原材料とするパンを食べるとはどういうことなのでしょうか。
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アオサギが食パンをのみ込もうとする |
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魚釣りの方法のひとつに、ルアー(擬似餌 ぎじえ)釣りがあります。
ルアー(lure)は英語で「誘う」などの意味です。
本物のえさに似せた、金属製・木製・プラスチック製などのものに釣り針を付けたものです。
それを動かすことにより、魚やカエルなどに見せかけ、くわえさせて、魚を釣り上げる方法です。
ルアーには様々な種類がありますが、その中にスプーンというルアーがあります。
食器として使われるスプーンが語源です。
船の上で食事中に誤ってスプーンを水中に落としたところ、ゆらゆらと揺れながら落ちるルアーを魚がくわえたことから、ルアー釣りがはじまったのでは、という有名な話があります。
ルアーは動かされていることがほとんどですので、くわえた時に魚が釣り針にひっかかってしまうことも多いですが、魚がルアーをくわえた時に、ひっかける動作(釣り用語で「あわせ」)をしませんと、魚はルアーを放してしまいます。
魚はルアーをくわえると、味覚で一瞬で偽物だと分かるようです。
近年では、すぐに放さないように味付けされたルアーがあるほどです。
ルアーのように、投げ入れられることでパンに動きが与えられます。
飛んで着水して止まった生き物としてアオサギには見えることが考えられます。
それでアオサギはパンを食べるのかもしれません。
アオサギは魚から哺乳類、虫なども食べます。
それらは味がずいぶん違うはずです。
アオサギは時々誤って枝や葉などを捕らえていることがありますが、すぐに放しています。
したがってくわえて味が分かるものと思われます。
食パンは動物性の味がするのでしょうか。
パンの動きに関係なく、ユリカモメがこぞって食べる様子を見て、食べられるかもしれないえさと認識し、くわえてみたら、それなりの味がしたので食べるようになったことも考えられます。
パンの原材料は小麦粉というイメージがあります。
いくつかの食パンの原材料を見てみますと、バター、ラードのほか、動物性のものもあるマーガリンなど、動物性の油脂に由来する可能性のあるものが必ずと言っていいほど含まれていました。
これら油脂の風味で、アオサギがくわえると動物性の味がしているのかもしれません。
※ バター(butter 英語):牛乳から分離したクリームを練り固めた油脂。
※ ラード(lard 英語):豚由来の油脂。
※ マーガリン(margarine 英語):油脂に食塩・乳化剤などを加え練り合わせた食品。
植物性・動物性のものがある。
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2012.02.15